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ハトを出した青年

公務員が人気職業になったのは、何時頃からだろうか?

25年位前、高校生男女半々の英会話クラスを担当していた時「将来の夢は?」と全員に聞いた事があった。男子は全員「公務員」女子は全員「公務員の奥さん」と答えたので、大変驚いた。
B:「他の夢はないの?」
生徒:「たとえば、どんな?」
B:「野球選手とか、歌手とか、科学者とか..」
生徒:「先生、今の高校生はもっと現実を見てるんですよ」
と言われた。今になって思うに、世の中の方向性を彼らの方が見抜いていたことになる。
・・・・・・・・・・・
その青年は成人英会話クラスにいた。1年のコースが終わって終了Party。社会人も多いクラスだったが彼は大学生だった。
青年:「もうすぐ卒業で、そのあと田舎に帰ります」
B:「就職は?」
青年:「地元で、公務員になります」
B:「もう少し、こっちで遊んでいたかったのでは?」
青年:「遅かれ早かれ、帰る身ですから、早ければ早いほうがいい。僕は長男ですし」
B:「田舎に帰ったら、即現実が待ってるわけだし、公務員ってなんだか、冒険できそうも無いし、青春は終りって、気はしない?」
青年:「大丈夫。出てきたときから、帰る事を覚悟していましたから、公務員としての夢を見つけますよ」

大学で手品部にいたと言う青年はPartyで皆をアット言わせた。彼のステッキの先から生きたハトが飛び出したのだ。
B:「レッスン中は何処に置いていたの?身体の何処にハトを隠していたの?」
青年:「先生、ハトは実は折りたためるのですよ。ほら、こうして。」
B:「あらら。まるでハンケチのようにポケットに入るわねぇ」

この青年は故郷でいい息子になり、いい夫になり、いい父親になるだろう。人生を楽しみ、夢を見つけることの出来る素晴らしい公務員になるだろう。希望のハトを飛ばせて回りに驚きと喜びを与えてくれるだろう。私は偏見と自分の未熟さを恥じた。
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道に、倒れる。

交通事故のリハビリも終え、職場復帰して1,2年が過ぎた秋の初めだったような気がする。
いつものように昼頃起きて、とにかくガバガバ薬を飲む。薬を飲まなければ、酸素が体内に入らないのだ。ゆっくり起きて薬が効くのをじっと待つ。効かないとわかると、別の薬を繰り返して飲む。出発時間に合わせて、気合を入れていく。それにしても今日は頭がすっきりしない。モヤモヤクラクラとしている。どうしたんだろう。
出発時間だ。家を出る。まず姿勢を正す。足が動き辛く、力が入らない。でも酸素が吸えているから大丈夫。多分声も出るだろう。近鉄線や地下鉄を乗り継いで梅田まで出た。阪急に乗る。西ノ宮駅に着く直前に意識が朦朧としてきた。飲みすぎた薬の副作用か。それとも酷い貧血のためか。珍しいことではない。西ノ宮校に向かって歩く。
その時だ。酸素が頭に届いていない、という内なる声が聞こえた。道にうずくまる。頭をもっと低くしなければ、ダメだ。恥も外聞もなく道端に寝転がった。誰かが見つけて救急車を呼ぶと、大騒ぎになる。早く起き上がらなければ。今、起き上がるのは危険だ、という内なる声がする。西ノ宮校まで、駅から歩いて一直線の十数分だ。こんな地面に寝転がっている場合ではない。今、起き上がってはダメだと再度内なる声が聞こえる。勇気を出して長々と横たわる。
しかし時間がない。立ち上がる。そして恐る恐る一歩一歩と歩いてゆく。
「今日は授業が出来ない」覚悟を決めた。
「今日は授業が出来ない、と予備校に着いたら学監に言おう。しかしうまく言葉が出るだろうか」
意識朦朧のまま、予備校に辿り着いた。汗を流しながら肩で呼吸をしていたら、スタッフの誰かから指示があった。
「Bruxelles先生、今日は模擬試験です。テスト用紙は下から2番目の引き出しに人数分入れてあります」
ありがたい、神様のご配慮か。
テスト用紙を配り「それでは、スタート」と声をかけてから、後ろを向いて過呼吸気味の深呼吸を始めた。循環しにくくなっている酸素を含んだ血液を頭まで押し上げなければならない。全身をポンプにして、それだけを考えて、ハーハーと息をした。外界をシャッタアウトして20分以上ひたすら過呼吸を続けた。

次の日は、一点集中の頭痛を感じながら、やはり意識朦朧として、よだれを垂らしながら一日中夢うつつで過ごした。そして次の日も。
このまま死ぬだろうと、内なる声が聞こえた。立ち上がり、服を着て病院に向かった。まだ30代だった。どこかに残っていた強い生命力が私を病院に向かわせたのだろう。

あれは何だったのだろう。ちょっとした虚血性貧血だったのか、あるいは脳梗塞の一歩手前だったのか。
薬の副作用か、極度の低血圧か、貧血のためか、フラツキ、めまい、立ち眩みは昔からしょっちゅうだった。目の前が真っ暗になると、面白がってわざとそのまま歩いたこともあった。だが、冷や汗を流し何かに寄りかかり、じっとうずくまることのほうが圧倒的に多い。けれど、私はそれが嫌ではなかった。そうして命がけで私の愛情を求めてくるもう一人の私を、ふととてもいとおしく思うのだった。そしてそうした繰り返しの中で、幼い時から不撓不屈だった私の「死への憧れ」が何時の間にか雲散霧消していった。

甘樫の丘にて

「片腕をもぎとられたような気がする」と言った。
片腕どころか心臓を抉られた思いだろう。
「三人で話し合いましょう、と言ったら、彼は女を家に連れてきた」
「二人で使っていたクレジットカードから、不明の出金を見つけて初めて気づいた。女の誕生日に彼が高級靴をプレゼントした」
彼と彼女は、アメリカの大学で知り合い、同棲し、卒業と同時に彼女の国日本で暮らし始めた。
彼女が留学前に働いていた学校で私は英会話を教えていた。週3回、仕事の帰りに残ったスタッフみんなで駅前の寿司店に立ち寄った。そうでない時も、スタッフの誰かと、夕食をとった。パーティーが好きなHO校では、クリスマス、新年会には市内のクラブで、みんなで大騒ぎしたものだった。いつも羽目を外して、折り重なって大笑いした。
彼女が「留学する」と打ち明けたのもその頃だ。
長い休暇で彼女が帰国した時も、もうみんなバラバラになっていたけれど、数人で彼女の家に集まったりした。

二人の結婚に家族は大反対だった。アメリカの大学を出ているその男性はバングラディッシュ人だったのだ。彼女は一足先に帰国し、横浜のインターナショナルスクールに教師の職を得、彼を迎え入れる準備を整えた。両親は説得され、二人は祝福され幸せな結婚式を挙げることができた。
私が交通事故で八幡市の病院に入院した時も、二人揃って横浜からお見舞いに来てくれた。林檎の皮をむき、ジュースを入れ、点滴が終わりました、と看護婦を呼びに行ってくれたのも、若い彼の方だった。

「浮気くらいなら許せる。許せないのは、二人で暮らしたアメリカの旧友達に、彼が女を連れて行って、会わせていたことだ」と言った。
「彼を露ほども疑がっていなかったから」全く気づかなかった。
私達は甘樫の丘に来ていた。彼女が心の重さを全部吐き出すためには、野外の方がいいだろうと、会う場所は私が決めた。
頂上まで来て、飛鳥平野を見下ろす。ここは蘇我氏の宮殿があった場所だ。入鹿ファンの私の、ここはマイプレイスのひとつだった。
「彼女は妊娠していた。私は引かざるを得なかった」
「彼ではなく、彼の持つアメリカに惹かれているだけではないのか、と聞いた」
「それが、なかなかいい女だったのよ」と彼女は笑った。
彼との直接話法を含め、彼女が事の顛末を全部英語で話していたことに、そのとき初めて気づいた。突然雨がパラツキ始めた。
「彼は今でも、電話してくるのよ。泣いて。朝も夜も、しかも取り乱して、彼女の悪口ばかり言うのよ」
「結局彼女は、彼の子供を中絶したの。それを彼は、僕の子供を殺したって。許さないって」
「電話する相手、間違ってるよね?そんな愚痴まで聞かされるなんて、ね」
・・・・・・・・・・

あれから十数年が経つ。あの後1,2度恋をして、それからお見合いをして彼女は最高のパートナーに巡りあった。
すべての過去は現在に到る伏線だと人はよく言うが、彼女の人生を見てそうだと思う。
過酷な体験は、軌道修正を促す神の警告なのかも知れない。
(根拠の無い推論を言うなって?)

Judyの目が回る

大きな音がしたので隣を見ると、そこにいた筈のJudyがいない。教壇の下に転がり落ちている。
予備校のリスニングの授業をJudyとペアーで担当して3年目だった。
「Judy Judy !」呼びかけたが返事が無い。目を覗き込むと、青眼がうつろに、しかしぐるぐる回転し始めている。漫画のようにうずをまいている。
生徒に1階に下りていって事務局の人を連れてくるように言ったが、誰一人身動きしない。1番前にいた二人を名指しで呼び寄せJudyの頭部を保持させ、教室付きの電話で事務局と連絡をとった。
Judyが何の理由も原因も無く、突然卒倒したのだ。
 ・・・・・・
残りのレッスンを一人で済ませ、事務局に急ぐ。学監が特別な部屋に案内してくれた。Judyはそこでベッドに横たわっていた。この校舎にこういうベッドルームがあることを、それまで知らなかった。
Judyはなんだか照れくさそうな様子を見せた。
「Bruxellesがね、大丈夫かって私に呼びかけている声やら、生徒に指示している言葉やら、全部はっきり覚えている。有難う」と言った。
B「何が原因だったの?酔っぱらっていたわけでも、ショックを受けたわけでもないのに」
 ・・・・・・・
帰り道、左右に別れる場所まで来た時Judyが小さな声で言った。
J「今ね、私のところにニュージーランドから友達が来てるの知ってるでしょう。昨日の晩ね、子供の頃の懐かしい話なんかしてね。その時、私、昔時々卒倒してたわねって話が出たのよ。もう10何年も前の話よ」
B「記憶が呼び起こされたことが、ひょっとして原因なの?」
J「自分でも忘れてたくらい昔のことよ」
B「懐かしくて、記憶が勝手に昔の自分を再現させたってこと?」
J「わからない。もしそうだったら、私の手に負えない話よ」 
 ・・・・・・・・・

高校1年生の時、後催眠を知り、心理学に興味を持った。後催眠とは、催眠術をかけられた記憶を消されたまま、つまり覚醒したままの状態で、何かの合図をきっかけに、指示通りに動かされる催眠術のことだ。Judyの卒倒は思い出話が仕組んだ後催眠に近いような気がした。

遺伝子とは、ある特定の状況に於いて、ある発言をしたりある行動をしたりさせる元、だとしたら、それは後催眠に近い。
自分の意志をもって生きているつもりでも、本当は人生のすべてを遺伝子によってプログラミングされているとしたら、人生は長いJe t'aime (Vivant Poeme:Barbara)ではなく、人生とは膨大な後催眠だということになる。

ScandalーA double suicide

写真を趣味にしていた従兄弟が葬式写真を頼まれたと言って、まず最初にその話を持ってきた。
「魔がさしたんでしょう」「女の業」「女の子が二人いるのに」「相手は薬大生」「母一人子一人の家庭の学生で」「まあ、残されたお母さんはどうなるの」
私がまだ小学校2,3年の時、近所の大ニュースになった心中事件だ。年上の人妻と若い大学生。人妻の方は命をとりとめた。
「離婚か」「子供に母親としてこれからどう接するのか」
命をとりとめた人妻とは、駅前で眼科医院を開業している美人女医だ。私ももっと小さい頃トラコーマにかかって、目に液体をジャーとかけられた記憶がある。まだ女医が珍しかった頃だ。
「何の不満があったのか。あんな立派なご主人がいながら」
そんな声が聞こえる。やはり非難は生き残った女医に集中した。
嘘か本当か知らないが近所の噂だと、彼女の夫は「白い巨塔」の財前五郎のモデルだと言う人もいる。阪大の心臓外科医で、年齢的にも飛ぶ鳥を落とす勢いの脂の乗った外科医だ。...
葬儀が終わり1週間もすると、生き残った女医は元の家庭に戻ったと言う話が伝わってきた。結局薬大生だけが死んだ。

学園紛争で全国の大学がグシャグシャになっていた頃だ。HSという子持ちの人妻の詩人がいて、このHSが早大の学生と心中事件をおこした。そしてやはり早大生だけが死んだ。
その頃知り合った京大生RK(後に京都大学大学院教授になって、時々京都テレビに出演している)は偶然だが、心中で死んだ早大生の親友だった。RKの話だと、真面目一筋の優秀な早大生は、その人妻詩人との生活を確保するために、大学を辞めて肉体労働をしていたそうだ。そういう関係になった以上、夫とならなければならないと思い込んでいた、馬鹿な奴だ、遊ばれただけなのに、RKは激怒していた。その女流詩人には興味がなかったので、会ってもいないし作品も読んでいないが、その心中事件は、詩を書く人間なら誰でも知っている、スキャンダルになった。
心中は共に死ななければ、決して美しくは完結しない。

Gribouilleが詩集「声のない部屋」(2000年3月思潮社刊)で書いている心中の生き残りは、悲惨の極みだ。


角の地主の蔵に
人間の女に良く似た
生き物がいた
こんがらがった伸び放題の髪
黒ずんだ浴衣で
ときどきどんぶりを持って
母屋の台所に立っていた
その生き物を
母たちは
ばけもん
と呼んでいた
その女には娘がいて
いつも神社の隅で
ひとり遊んでいた
その娘は噛みつくから
遊んではいけない
と母たちは言っていた
・・・・・(中略)・・・・・
大人たちの
密かな噂話の意味が分かった
かつて地主の妻だったその女は
同性と心中未遂をして
相手の女は死んだ
・・・・・(後略)・・・・・

Hello! English!

フランスから帰ってアルバイトをしては、小説を書いていた頃、中高時代の友達のむつ子さんにばったり出会った。
彼女はEという語学学校の職員になっていた。
「私もそこで雇ってもらえる可能性ある?」と聞いたら「Bruxellesさんだったら、絶対受かると確信している」と答えてくれた。
そこでそこの講師採用試験を受けることに決めて、出かけて行った。
まず筆記試験。それが終わると部屋を移って次は論文テスト。文章は書き慣れているが、「お主やるな!」と思わせる内容を盛り込まなければならない。書いている最中にスタッフが入ってきて「これが終わると次は○号室で口答試験です」と、私一人に耳打ちした。
と言うことはここまではパスしたのかなと、思った。
英語での口答試験、試験官の日本人の発音が素晴らしくよかったことしか覚えていない。
終わって帰ろうとしたら「ちょっと待ってください」と言われた。
その試験官がどこかに電話をしている。
試験官「素晴らしい先生が見つかりましたよ」
誰?ひょっとして、もしかして、私のこと? まさかね。
試験官「今からそちらに行ってもらいます」
私の勤務先は堺校に決まったらしく、その足で堺校に行きそこの学監と細かい打ち合わせをしてきてください、と言われた。
ポカンとしたまま、堺校に行くと、学監のK氏が満面の笑みで迎えてくださった。
2週間ほど本部でみっちり研修を受けたあと、ここの夜間の初級成人英会話クラスを担当することが決まった。
とりあえず挨拶にと言われて、学監のK氏と教室に向かう。
K氏「素晴らしい先生が見つかりましたよ。しかも若くてbeautifulなBruxelles先生が来月からあなたたちの担当です」
若い美男子の私好みの男性が「Oh yes, she is beautiful!」などと言っているではないか!
なんだか狐につままれたような上の空。暗示にかかっていきなり「素晴らしい、しかも美人の先生」になったつもりになる。
なんだかよくわからないが、きわめて高く評価されたのだろう。人生でこんなにことが絶好調に運ぶ日など、めったにないと思う。いきなりドラマのヒロインになった気分だ。
帰って母に「今日突然、語学学校の非常勤の英会話講師になった」と告げた。
それは全国展開中の飛ぶ鳥を落とす勢いの、生徒であふれかえる、しかもすでにname valueのある語学学校だった。
純文学と格闘し続け、一日中ラーメンごはんで食い繋ぐ日々との「さよなら」だ。

希望の鳥 or ある女性編集者

希望の鳥」の次にサイト「希望の年・希望の鳥」に入稿を予定している作品「虹色のシラピラパラ」は子供向けまんが雑誌に童話として発表した作品だ。その雑誌はしばらくして廃刊になったが、決して漫画雑誌として廃れて廃刊になったわけではない。横山光輝の「三国志」や手塚治虫の「ブッダ」が華々しく連載中の漫画雑誌だったのだから。
希望の鳥」は実はこの雑誌で、子供向きではないという理由で、ボツになった作品なのだが、私にとっては手ごたえのある作品となったので、同人誌「海とユリ」の記念すべき終刊号に提出することにした。
これで筆を置こうと思っていたし、仲間の同人達も高く評価してくれ、なにより親友の姫神さんが、私のラストの作品として充分納得してくれた様子だったので、気持ちの整理がつけ易かった。
英会話講師の仕事が忙しくなるにつれて、文字を介するより、直接人と接する時間が生活の大半を占めるようになっていった。

「虹色のシラピラパラ」を書く以前か書いた後かは忘れたが、出張で大阪に行くので、よかったら一度お目にかかりたいと、その雑誌の編集者I氏から連絡があった。私がホテル・プラザに出向くことにした。

どちらも仕事を終えた後だったので、着いたのは午後8時を回っていた。
梅田からタクシーに乗ったのだが、近すぎる、という理由でやんわり乗車拒否されタクシーを降りたのを覚えている。その後歩いたのか、またタクシーを止めたのかは覚えていない。
女性編集者のI氏はまずお土産にと言って、くるみの実でできたキーホールダーを下さった。ちょうどバイクを買ったばかりだったので、その後長い間愛用した。
私とI氏は初対面であるし、今日は、仕事外、との約束だったので、何をどう話していいか、少し戸惑った。お互いプライベートの話は避けた。ホテルのバーに行って、初めましてと、カクテルでまず乾杯した。
彼女は何か聞いてもらいたい話しがあったのかもしれない。
結局は、抽象的で哲学的な話ばかりした。人間存在とは大河の一滴で、人間一人はスポイトの水滴、時間空間を超越して、すべての存在はすべてと繋がっている、生命の個など、実は無いのだと、そのような結論に話は流れていった。気がつけば午前1時を回っていた。もう帰りの電車が無い、じゃ、泊まっていけば、とも誘っていただいたが、タクシーで帰ることにした。

タクシーの中で気分が悪くなって、止めてもらって、外に出て、何度か吐いた。
taxi driver: ちょっとどこかで、休んでから帰ったほうがいい。
B: 大丈夫です。そんなに酔ってませんから。
Taxi driver: 僕と付き合ってくれたら、タクシー代ちゃらにして、その後、家まで送るけど、どお?
B: ええぇー! ケッケッコーです。お金は払いますし、このまままっすぐ高野大橋を超えてください!
B: 運転手さん、そんな事言って、はい、そうしてください、なんて言う女の人がいるんですか?
taxi driver: わかったよ。今言ったことは忘れて。こんな時間に、酔っ払ってタクシーに、しかも一人で乗る、物慣れしていて、だから、なんて言うか、もっと話のわかる人だと思ったんだよ。
B: 話のわからない人なんです。すみません。あっ、そこ、左です。

この1件以来、どんなに酔っていても、タクシーに乗った瞬間一気に酔いが醒めるようになった。やっかいだ。女性はタクシーに乗ることにさえ、警戒心を忘れてはならない、なんて。
それとも、そもそも若い女性が、真夜中に酔っ払って一人でタクシーに乗ることの方にこそ、問題があるのだろうか。

女性編集者のI氏とは、その後も連絡を取り合ったが、1年後に退社された。今から思うと、何か書きたい気持ちが彼女自身にあって、それにしかし何らかの方法で無理矢理折り合いをつけたかった、そんな時期だった様な気がする。
さらに数年後、彼女と同姓同名の女流作家が登場した。まさか、彼女ではないと思うのだが。

作家としてのYves Simon

N氏の第2弾「黒猫」の中にYves Simonの「パリの1500万秒」(永瀧達治訳)を発見、読み始めた。
そこに登場する人物は仲間で彼の提示する時代は、そっくり私達が吸った時代の空気と同じ味がする。Yves Simonを私たちのあの時代のひとつのシンボルとさへ感じる。

「彼女は一通の手紙を50回も読み直しては一晩中泣いたようなことがあったのだろうか」(p.28)

私はどうか。思い出してみる。
「私は一通の手紙を50回も読み直しては、ポストに投函したことが何度もあった」

書くと言う行為は愛のある行為だとつくづく思う。長い期間、登場人物達を心に宿して生きる。日常が新鮮な意味を持ち、見慣れた物体が語りかけてくる。それは身体の外に飛び出た、新たな頭脳の回路となり、シナプスが目を見張るばかりに自主結合を展開する。
そのエネルギーは愛なのだろうが、それは、愛の苦しみなのか愛の結晶化なのか、それとも愛の創造なのだろうか。

L'oiseau Invisibleの鳥篭に鳥を何羽増やしても、膨大な時間と金銭の浪費と、その空虚さを実感するばかりで、喜びである筈なのだがその喜びは、空虚さの影に打ち消されてしまう。

書くと言うことが、そう言った”作業”と次元を異にするのは、想像力と創造力が活性化する時には、特別な熱量が発生し、たとえ一瞬であれ新たな生命力が新たな細胞が誕生しているからではないだろうか。

書くと言う行為は愛のある行為だとつくづく思う。
私は鳥たちを飼いはじめて、その分書く喜びを見失っている。

入試シーズン

予備校教師をしていた年月が一番長かった。毎年この時期になると新聞に掲載される入試問題にはすべて目を通す。どこの大学は今年から傾向を変えたとか、今年のセンター入試は教科書と離れすぎているとか、入手可能な限り多くの問題にあたって、収集、記憶、分析しなければならない。予備校の教材には何年の何大学の出題かという記載はされているが、出題者の狙い、癖、できれば来年の予測までしたほうがよい。
赤本、別名、過去問と同じで、それが合格へのワンステップになるかと言うと、単なる気休めに過ぎないと思うのだけれど、傾向分析、出題予測に関するデーター処理力には、予備校の校運がかかっていると、実は予備校も思っているし、一般的にも思われている。

大昔、私が受験したときもそうだったが(3日間連続だった)校門を出ると予備校が解答を配ってくれる。
ある時比較的親しいある数学の教師の一人(S)に聞いてみた。
B「あの校門で配る解答、誰がどこで作るんですか?」
S「実際の問題を入手して、専任スタッフが超スピードで解くんですよ」
B「印刷されている場合も多いですよ。解説つきで」
S「一秒を争って印刷に回すんですよ。専任スタッフは大学の近くのホテルで各教科、何人もスタンバイしてるんです」
B「知らなかった。でも入試問題はどうやって入手するんですか?}
S「実際予備校の職員が出願して受験生になって入室するんですよ」
B「えぇっ!」
S「問題が配布されたら、受験生の職員はすぐに退出します」
B「でも問題を持ち出せない場合が多いでしょう?」
S「トイレに行くふりをして、ポケットに押し込んで持ち出すんです」
B「えぇっ!まるでスパイ映画もどきですね。それから?」
S「待ち受けているバイクに、あらかじめ決めた方法で、放り投げるんです」
B「ハラハラドキドキですね」

これが実際その専任スタッフだった人から聞いた話だけれど、今と違ってワープロもファックスもプリンターもない時代に、そんなことをするだけで速度的に可能だったのかと、今でも半信半疑だ。

印刷された入試問題を投げる、という言葉で思い出す事件がある。
もう20年以上前になるだろうか。その事件が発覚した時は、犯罪が行われた3年後のことだったので、その国立大学医学部の3人は、発覚と同時に抹消になった。ヒートアップした入試競争のさなか闇の受験屋が横行していたのだろう。3年間学んだ後。その3年間を帳消しにされた医学生達、その後どんな人生を歩んだのだろうか。紙切れ(合格証)一枚に当時で一人数千万が動いたことは間違いない。
国立なので賄賂による裏口でもない。替え玉でもない。入試問題を印刷している刑務所から、問題が盗まれたのだ。塀の中の一人がポケットに入れて持ち出し、塀の外の人に放り投げたのだそうな。

予備校の講師控え室で

予備校の講師控え室で、ごくたまにある解釈に関して講師が意見を出し合うことがある。
こういう時は辞書や文法書や参考書では解決しない。その次元の疑問なら、質問を提出すること自体が講師としての恥だからだ。
全員がウーンと唸るような質問である必要がある。

「ひょっとしてこれは、mealとmeatのミスプリではありませんか」と気づいたこともある。意外かもしれないがミスプリも実は難問のひとつで、それに気づくのも解釈力の範疇に入る。

議論が弾んだ時は大体次のように会話が進む場合が多い。
「こういう意見にたどり着く筈だから、ここは・・・」
「賛成、反対、賛成と来ているのでここは反対の例として出す部分だから、こう考えたらどうか・・・」
「この人はこういう思想を持った人だから、究極的にはこう運ぶ筈だから、ここは・・・」
もっと頭のいい人はこういう意見を出す。
「この人はこういう性格だから、こういうことを皮肉で言っているので、逆説的にとる必要がある」
「この単語は音の勢いで出しているだけだから、重要視してはいけない」
正しい方向に意見が進むとさらにこうなる。
「この出題者はこの文をこう読み解いて、こういう意図で出題している筈だから、つまり・・」
「この出題者は勘違いして、ひょっとしてこの文をこう読んで、こう狙って出題し、解答にこういったことを要求しているのではないだろうか」
あげく、この出題者の専門は何なんだろう、語学力はどの程度か、受験生にどのレベルまでの深さを要求しているのか、その出題校自体のレベルはどうか、云々。

毎年たくさんの入試問題を見ていると駄作にも多く出会う。解答がひとつに決まらない問題。出題自体が駄文の場合。つまり、切れや締まりのない文章。
入試問題はなにより学力判定力を備えた出題で構成されなければならない。問題作成だけで手一杯で、その本来の役割にまで到達していない問題も結構多い。つまり出題者の能力の低さが露呈される場合だ。
逆に文章も出題も素晴らしく読んで感動さへ覚えるような入試問題に出会うことも、たまにはある。
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「Du Soleil Levant」に新しくいれた「Pierre Perret」の「Lily」。
gugusという単語にひっかかりを感じて、時間をかけた。
Jacquesの意見ではgugus=imbeciles。黒人乗車拒否のバスに火を放つ・・のだからgugusで当然なのだが、その中でその人たちに混じってLILYが怒りの拳を突き上げる・・その行為をPerretはどう捕らえているのだろう。Jacquesに何度も質問し、Jacquesから何度も同じ答えが返ってきた。「Perretの立場は不鮮明」(人種差別には反対だがBlack Pantherにも反対なのだと)
LILYは啓蒙されないまま流されてBlack Pantherと行動を共にする。このPerretの不明快視点がどうも気になるのだが、それが現実視という視点なのだろう。Perretは決してLilyを褒め称えているわけではない、ルポタージュの視点で描写してみせただけだ。
実はもうひとつ引っかかったところがある。
On a moins peur des loups qui guettent le trappeur
このloupsは何を象徴するのだろう。Jacquesの意見ではloups=black poeple 、trappeur=white people。とすればLilyが怯えていたのは黒い同胞たちの方だ。怒りは白人に向き、恐怖は黒人に向くLily。
入試問題ではあり得ないスタイルだ。
カメラを数ヶ所に据えた写実的映画のように、なにをどう汲み取るか、すべての判断を観客に委ねている詩法と言える。
シャンソンの歌詞にはこの複合視点は結構ある。
まだ手をつけていないがBarbaraの「Mal de Vivre」唐突に「Joie de vivre」にもなるのだ。「私の埋葬式に」でも出だしの心境と終わりの心境は突然変化している。歌詞は、論理を突き詰めるのではなく、むしろ心理の変化を、視点の複合を大局的に受け入れなければならない。心しておきたいと思う。

参照:LILY de Pierre Perret

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