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作家としてのYves Simon

N氏の第2弾「黒猫」の中にYves Simonの「パリの1500万秒」(永瀧達治訳)を発見、読み始めた。
そこに登場する人物は仲間で彼の提示する時代は、そっくり私達が吸った時代の空気と同じ味がする。Yves Simonを私たちのあの時代のひとつのシンボルとさへ感じる。

「彼女は一通の手紙を50回も読み直しては一晩中泣いたようなことがあったのだろうか」(p.28)

私はどうか。思い出してみる。
「私は一通の手紙を50回も読み直しては、ポストに投函したことが何度もあった」

書くと言う行為は愛のある行為だとつくづく思う。長い期間、登場人物達を心に宿して生きる。日常が新鮮な意味を持ち、見慣れた物体が語りかけてくる。それは身体の外に飛び出た、新たな頭脳の回路となり、シナプスが目を見張るばかりに自主結合を展開する。
そのエネルギーは愛なのだろうが、それは、愛の苦しみなのか愛の結晶化なのか、それとも愛の創造なのだろうか。

L'oiseau Invisibleの鳥篭に鳥を何羽増やしても、膨大な時間と金銭の浪費と、その空虚さを実感するばかりで、喜びである筈なのだがその喜びは、空虚さの影に打ち消されてしまう。

書くと言うことが、そう言った”作業”と次元を異にするのは、想像力と創造力が活性化する時には、特別な熱量が発生し、たとえ一瞬であれ新たな生命力が新たな細胞が誕生しているからではないだろうか。

書くと言う行為は愛のある行為だとつくづく思う。
私は鳥たちを飼いはじめて、その分書く喜びを見失っている。
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お茶会

何故その日のことを覚えているのか、自分でも不思議に思う。
父はまだ生きていた。私は3歳くらいか。
祖母がお茶会に私を連れて行くと言う。
母親から分離していない私は、母親と離れたくない。
父親「羊羹かまんじゅうが食べられるよ」
私「本当!!」
羊羹とお饅頭を頭に描いて、祖母に手を引かれて出かけた。

祖母「ここでこうして手を洗うのよ」
言われた通りにする。
祖母「ここを開けるのよ」
私「こんなところから?おばあちゃんもこんなところから入るの?」
面白そうだと思った。でも、泥棒みたい。
中にはたくさんの着物を着た人がズラリと並んでいて、入り口付近に二人分の座布団が空いていた。そこに二人で座る。

「先生どうぞこちらへ。上座のほうに」と言う声があちこちから飛ぶ。祖母が先生で、こんなに多くの知り合いがいるとは、信じられない。別世界だ。
祖母「今日は孫を連れていますので、こちらで」
A「可愛いお孫さんですね。お行儀がいいこと。もう心得がおありなのね」
祖母「いいえ。お菓子に釣られてついてきただけです。そうね、Bちゃん」
私「はい。お饅頭が食べられると聞いて・・・」
一同笑う。
お茶を飲んでお菓子を食べたことは覚えていないが、お茶碗が回ってきたのを覚えている。祖母がお茶碗を手に持ってしげしげと眺めている。何をしているのだろう。私もひっくり返したりして眺める。
あれは「お茶碗拝見」と言って、お茶碗そのものの価値を愛でるのだと、帰り道に祖母が教えてくれた。
食器ではないお茶碗もあるのだと驚いた。
しばらく家中の食器をひっくり返して「お茶碗拝見」をして遊んだ。
そして次の日から、和室の戸を開けずに、小さな窓から、出入りするようになった。兄がそれを真似た。いちいち座って戸を開けるより、立ったままで窓から入るほうがずっと楽しい。

帰りに百貨店に立ち寄る。祖母が木のくまさんのブローチを買ってくれた。それからレストランに。
祖母「Bちゃん、ホットケイキ食べる?」
私「ホットケイキって何をほっとくの?」
バターを塗ってシロップをかけてナイフとフォークをこう持って、こう使って云々。言われたとおりにする。
今日のおばあちゃんはいつものおばあちゃんではない。他にどんな御菓子を知っているんだろう。この人は。

心斎橋筋にまだ、楽器を演奏する傷痍軍人の姿があった頃の話だ。

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