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お茶会

何故その日のことを覚えているのか、自分でも不思議に思う。
父はまだ生きていた。私は3歳くらいか。
祖母がお茶会に私を連れて行くと言う。
母親から分離していない私は、母親と離れたくない。
父親「羊羹かまんじゅうが食べられるよ」
私「本当!!」
羊羹とお饅頭を頭に描いて、祖母に手を引かれて出かけた。

祖母「ここでこうして手を洗うのよ」
言われた通りにする。
祖母「ここを開けるのよ」
私「こんなところから?おばあちゃんもこんなところから入るの?」
面白そうだと思った。でも、泥棒みたい。
中にはたくさんの着物を着た人がズラリと並んでいて、入り口付近に二人分の座布団が空いていた。そこに二人で座る。

「先生どうぞこちらへ。上座のほうに」と言う声があちこちから飛ぶ。祖母が先生で、こんなに多くの知り合いがいるとは、信じられない。別世界だ。
祖母「今日は孫を連れていますので、こちらで」
A「可愛いお孫さんですね。お行儀がいいこと。もう心得がおありなのね」
祖母「いいえ。お菓子に釣られてついてきただけです。そうね、Bちゃん」
私「はい。お饅頭が食べられると聞いて・・・」
一同笑う。
お茶を飲んでお菓子を食べたことは覚えていないが、お茶碗が回ってきたのを覚えている。祖母がお茶碗を手に持ってしげしげと眺めている。何をしているのだろう。私もひっくり返したりして眺める。
あれは「お茶碗拝見」と言って、お茶碗そのものの価値を愛でるのだと、帰り道に祖母が教えてくれた。
食器ではないお茶碗もあるのだと驚いた。
しばらく家中の食器をひっくり返して「お茶碗拝見」をして遊んだ。
そして次の日から、和室の戸を開けずに、小さな窓から、出入りするようになった。兄がそれを真似た。いちいち座って戸を開けるより、立ったままで窓から入るほうがずっと楽しい。

帰りに百貨店に立ち寄る。祖母が木のくまさんのブローチを買ってくれた。それからレストランに。
祖母「Bちゃん、ホットケイキ食べる?」
私「ホットケイキって何をほっとくの?」
バターを塗ってシロップをかけてナイフとフォークをこう持って、こう使って云々。言われたとおりにする。
今日のおばあちゃんはいつものおばあちゃんではない。他にどんな御菓子を知っているんだろう。この人は。

心斎橋筋にまだ、楽器を演奏する傷痍軍人の姿があった頃の話だ。

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