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Gentlemanと執事 (1)

「○○○○さんの家はどこですか?」とあるGentlemanが私に尋ねた。
父の葬儀の前なのか後なのかよく思い出せない。
バッドマスターソン風の出で立ちで、明らかに私の知らない世界の人だった。
その人が口にしたのは祖母のフルネイムだ。
「○○○○さんはこの家の人ですよ」
家のまん前にいた私は家の玄関を指さした。
おばあちゃんにお客さん?あの人は誰なんだろう。

後で祖母に聞いたら、その人は全員東大卒の石原四兄弟の一人、石原長次氏であることがわかった。仕事は全国を渡り歩いて鉱山の売買をする、いわゆる山師。生涯独身なのだそうだ。そのMr.Dandyが、一人息子を亡くした祖母の身を案じて、老体に鞭打ってたった一人で駆けつけた?
石原長次氏は私の祖父の従兄弟。私の曾祖母が石原の出なのだ。
曾祖母が嫁いできた時代は、圧倒的にこちらの方が資産に於いて上だったそうで、釣り合いを取るためにかなりの花嫁道具と持参金がつけられたという。
曾祖母ゆうは二人の男子を産む。長男和三郎は学者を志して、15歳の子供の頃に渡米、淀屋橋の天満屋を継ぐべく次男良三が、期待を一身に集めて育てられた。が若くして未婚のまま日露戦争で戦死。気の毒に曾祖母ゆうは、玉の輿に近い結婚だった筈なのに、その後天満屋は没落の一途をたどる。
石原四兄弟の父は大阪の実業界にその名を残した人物。四兄弟も誰一人死ぬことも無く、日清、日露やその後の戦争にもびくともせずに商都大阪の発展に尽力し、株式会社への制度転換や鉄筋コンクリートのビルディングの建設やら、システムの西洋化の先陣を切り、時代に翻弄されることは無かった。

祖父和三郎を亡くした後、私の父である息子となんとか細々と暮らしていた私の祖母も、B29に家を焼け出され、あげく昭和35年、老齢の身でまだ若い一人息子を亡くすという最悪の事態を迎えることとなったのだった。

B:「長次さんは、おばあちゃんにプロポーズに来たんじゃないの」

「これからどう暮らしてゆくつもりですか。親戚みんなで相談して行く末を考えましょう」と長次氏は言ったらしい。
これは子供の私が聞いたうろ覚えの話なのだが、祖父の亡き後、しばらく長次氏と暮らしたことがあるらしい。塩屋に別荘があって、そこでひと夏。あるいは東京で。再婚など発想することさえ、時代の道徳が許さなかったのだと思う。

B:「おばあちゃんは、病気の孫をほおっておけなかったのね」

仮にプロポーズだとしても、目の前の老人は夫の従兄弟で、その家は栄えて、自分は丸裸の、しかも一人息子に死なれた老女だ。祖母は自分を客観視できたから、首を横に振ったのだと思う。
もっと小さい4,5歳くらいの私は、60代半ばの祖母に毎週のように会いに来ていた、和服を着た茶道教師の恰幅のいいGentlemanを覚えている。もっと若い祖母に長次氏が恋をしていたとしても、何ら不思議ではない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

10年後に入院した祖母は肝臓ガンだと判明した。
あなたに家を教えた孫だと名乗り、私は独断で長次氏に祖母の危篤を伝えた。
「残念なことに病気で身動きがとれない。○○○○さんに、どうぞ宜しくお伝えください」・・・
私はその返事を、すでにガンの相が出ている○○○○さんに手渡した。
手紙を見て祖母は驚いたが、その後、かすかに微笑んでくれた。

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現在の石原時計店の建物を取材しているBlogが有ったのでトラックバックさせていただきました。
参照:そのほかの日々 2004年7月15日 :大阪空襲と石原ビル

コメント

おばぁさんは、良かった時代、好きだったろう石原さんえの思い出を持って旅立たれたと思います、孫の貴方が思い出す事によって供養になるの、私も、ぼーと弟の事を思い胸せまります、病気がちだった、お父さんも亡くした貴方の事、心残りだったと思うとき、これからの人生に身体に気をつけ毎朝頑張りましょう

気遣いの心

祖母は恋愛感情は無かったと思います。過去をなくした孤独な晩年の祖母に、昔からずっと見届けて気遣ってくれる人の存在があったこと、それは救いであったと思い書き留めてみました。

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