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迫力のある人(7) 「いくらなんでも」

世間体を気にして、枠にはまってチマチマ生きないところがBさんの魅力だ。いつも爽快に吃驚させてくれる。でもその話を聞いた時は、事実は小説よりも奇なり、などと言うあらゆる表現を飛び越えていた。「ウッ」と言ったまま言葉も出ない。
Bさんが、自宅の近所のアパートに女を囲っていた、というのだ。
「女って、あの戸上正美?いくらなんでも、それはちょっと。何の目的で。何のために?何をしてたの?いつから?」
しかも、その女が、昨日、男と逃げたと言う。
「男って、佐竹友人?複雑ねえ。クックックックッ。無茶苦茶もここまでくるとクックックックッ、無茶苦茶すぎて感動するねクックックックッ・・今どんな気持ち?」
「そりゃ、面白くない。でも、・・可笑しい、自分が当事者でなければ、私も噴出しているかも・・、でも面白くない」
ミナミの「街」であった佐竹友人の出版記念会には、私も出席したばかりだった。佐竹友人を作家に育てたのは支路遺耕治だ。今回の本も他人の街社から出ている。・・
昨日のホヤホヤの話をBさんが始めた。
いつものように合鍵でアパートのドアを開けた。目に飛び込んできたのは,ベッドで寝ている男と女。Bさんは息をのんで立ち止まる。女が素っ裸でBさんに駆け寄る。
「Bさん、これにはちょっとワケが・・・」
「一体これは、どういうことなの。説明して」
ちょっとした口論。布団をかぶって寝たふりをしていた男が、ガバッと布団をめくり、起き上がる。
佐竹「それが、詩人の言う言葉かよ」男が開き直る。
Bさん「これが、詩人のすること?」
Bさんがノコノコ現場に踏み込まなければ、何事も無かったように過ぎ去ったことだっただろう。でも、こういう現場をBさんが見てしまった以上、ことは重大化せざるを得ない。戸上正美は結局佐竹友人と東京に出奔した。
「岡田さんの時のように刃傷沙汰にならなくてよかったね、まだしも。ただ、Bさん、相手がねえ。友達の女房を獲るのは、いくらなんでも。まずいのでは。そこは認めたくない」
Bさんが囲っていたのは、支路遺耕治の2番目の妻だった。何かの間違いであってほしい。しかも佐竹友人は、今は勢いのいい作家とは言え、支路遺耕治が多大な借金を背負ってまで面倒を見て育て上げた男だった。
「後味悪い話ね」
いつか支路遺耕治が言っていた話を思い出した。あいつは押しかけ女房なんだ。まあ正式に花嫁道具も持ってきてるし、籍にも入っているけれど。・・・?
今回支路遺耕治は友達と女房と男友達の3人に裏切られているわけだ。Bさんは囲っている女に逃げられただけだけれど。
「Bさん、Bさんは戸上正美の一体どこが好きだったの?この話はBさんの評判を悪くする。イメージが悪すぎる」
・・・・・・・・・・

それから約1年後、ひょんなことから、BさんとBさんの息子のS君、そして支路遺耕治と私の4人で宝塚ファミリーランドへ遊びに行ったことがある。4人とも何事も無かったように、そして4人とも戸上正美と佐竹友人のことは、もうすっかり忘れていた。・・
あの事件からしばらくしてBさんがついに真相を私に告げたのだった。
実は支路遺さんは心臓を病んで、半分以上死にかけていた。元気で要求の激しい戸上正美に、根を上げていた。そして友人のBさんに「あいつをなんとかしてくれ」と頼んだらしい。Bさんには義侠心がある。「なんとかしましょう」と一肌脱いで「女を囲った」のだった。美談だ。しかも大笑いするような美談ではないか。
ひょっとしてあの二人が出奔した夜、Bさんと支路遺さんはどこかで密かに会って乾杯をしていたのではないかと、私は思っている。
事実は小説を飛び越えて宙返りしてさらになお奇なり、だ。
///////////////////

「En rouge et noir」 par Jeanne Mas

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